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2025/09/19 コラム

薬局M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?

〜簡易DDだけでもしなくて本当に大丈夫ですか?〜

薬局業界では、後継者不足や薬価改定への対応などを背景に、M&A(企業の買収)が増えています。
「良さそうな案件がある」と話を受け、実際に検討段階に入る経営者様も多いのではないでしょうか。

しかし、M&Aの成否を大きく分けるのが デューデリジェンス(DD:Due Diligence=調査) です。
薬局を買収する際に、その財務内容・法務・労務・事業の実態をきちんと把握するプロセスであり、これを怠ると後々大きなリスクを抱えることになります。

 

デューデリジェンス(DD)の役割

 

DDとは、M&Aの対象となる会社の実態を多角的に調査し、リスクを洗い出す作業です。
特に薬局の場合、次のようなポイントが焦点になります。

 

  • 財務面:決算書の信頼性、在庫評価、固定資産・リース残高、借入金の状況
  • 収益面:処方箋枚数の推移、処方元クリニックとの関係性、薬価改定の影響
  • 労務面:薬剤師やスタッフの雇用条件・残業状況・就業規則の整備
  • 法務面:賃貸契約、取引基本契約、行政指導・監査履歴の有無

 

こうした点をしっかり確認することで、買収価格が妥当かどうか、将来的にどんなリスクが潜んでいるかを判断できます。

最近では、M&A仲介会社や簡易調査サービスを通じて「簡易DD」が行われることも増えています。
簡易DDはコストが抑えられるメリットがありますが、深いリスクまでは把握できないことが多いのが現実です。

 

さらには薬局M&Aにおいては、簡易DDすら行われないケースも少なくありません。
その理由としては、コスト面や検討にかけられる期間の制約が大きく、十分な調査を実施することが難しいこともあるからです。

当事務所にも、仲介会社から渡された書類だけを頼りに判断せざるを得ず、「これで本当に大丈夫なのか」と不安を抱えてご相談に来られる経営者様がいらっしゃいます。

 

専門家が行うフルDDのメリット

 

税理士や会計士、弁護士などの専門家が関与するフルDD(詳細なデューデリジェンス)では、次のような点まで掘り下げます。

  • 決算書と実際の帳簿・証憑を突き合わせて数字を検証
  • 修正PLの妥当性を検証し、「業績を良く見せる修正」が含まれていないか確認
  • 処方箋データの長期的な推移や医師との契約内容を分析
  • 労務トラブルの可能性や未払残業代などの潜在リスクを洗い出し

時間とコストはかかりますが、買収価格交渉や契約条件の修正につながる根拠が得られるのは大きなメリットです。

 

こんなときは相談してみましょう

 

「簡易DDで十分だろう」と思っていたとしても、以下に当てはまる場合は専門家への相談をおすすめします。

  • 案件規模が大きい(複数店舗や億単位の取引)
  • 契約で修正PLが提示されているが、内容に不安がある
  • 薬局業界に明るくない仲介会社から案件を紹介されている
  • 自分で財務・法務リスクを確認するのは難しいと感じている

 
相談したからといって必ずフルDDをしなければならないわけではありません。


専門家の意見を聞いたうえで、簡易DDで十分か、追加調査が必要かを判断すればよいのです。

またな簡易DDすらできない場合でも専門家に見てもらうことで明らかな違和感について指摘してくれることもあります。

 

まとめ

薬局M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)は、案件の真の価値とリスクを見極めるために欠かせないプロセスです。
簡易DDは便利ですが、修正PLの扱いや処方箋の安定性、労務リスクなど、見落とすと致命的になる要素を拾いきれないこともあります。

大切なのは、「不安があれば相談してみる」という姿勢です。専門家の知見を借りることで、安心してM&Aを進めることができ、経営者自身が納得できる判断につながります。

当事務所では、薬局専門の会計事務所として、簡易DDからフルDDの実施、契約前のリスク確認まで幅広くサポートしています。
「この案件、簡易調査だけで判断してよいのか不安だ」という薬局経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください

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