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2025/09/12 コラム

労働分配率ってなに?薬局経営における経営指標の活用法

お客様から労働分配率についてご相談を受けます。

薬局経営を続ける中で、「労働分配率(ろうどうぶんぱいりつ)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
これは経営の健全性を測るうえで欠かせない指標の一つであり、特に人件費が大きな割合を占める薬局業界にとって重要な意味を持ちます。

本記事では、薬局経営者の方に向けて、労働分配率とは何か、そして経営改善にどう活用すべきかを解説します。

 

労働分配率とは?

労働分配率とは、会社が稼いだ利益(付加価値)を人件費として従業員にどの程度分配しているかを示す指標です。

計算式は以下のとおりです。

労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値 × 100(%)

ここでいう「付加価値」とは、企業が新たに生み出した価値を指し、
薬局の場合は「売上高-薬剤仕入高-外注費」などで算出することが一般的です。

 
👉 補足:薬局の科目体系によっては、付加価値を「売上総利益(粗利)」と同義で捉えて計算しても実務上は支障がないケースがあります。つまり、「売上高-売上原価(薬剤仕入等)」を付加価値とみなし、その範囲内で人件費が占める割合を測るのです。もしくは営業利益+人件費+減価償却費で算出する方法もあります。

つまり、薬局で稼いだ利益のうち、どれくらいを給与や賞与などの人件費として従業員に還元しているのかを割合で表すのが労働分配率です。

 

薬局における労働分配率の目安

一般的に、薬局業界では労働分配率が50~60%程度であればバランスが良いとされています。

50%以下 → 人件費が抑えられすぎている可能性。人材不足や離職リスクにつながることも。

60%超 → 人件費の比率が高すぎ、利益が圧迫されている可能性。経営改善が必要なサイン。

薬剤師は専門職であり人件費の比率が高い業種です。そのため、飲食業や製造業と比べても労働分配率は高くなりやすい点を理解しておくことが大切です。

 
労働分配率をチェックするメリット
 
1. 人件費の適正度を把握できる
 
労働分配率を確認することで、人件費が売上や利益に対して適正かどうかが分かります。
人件費が高すぎれば経営の圧迫要因となり、低すぎれば人材確保に苦労する原因となります。
 
2. 経営改善の指針になる
 
「人件費が重いのか」「それとも付加価値(稼ぐ力)が低いのか」を切り分けられるのが労働分配率の強みです。
例えば60%を超えていれば、単に給与水準を下げるのではなく、売上の拡大や仕入管理の効率化など、付加価値を増やす方向の改善策を検討すべきです。
 
3. 他店舗展開の判断材料に
 
労働分配率を店舗ごとに算出することで、どの店舗が効率的に収益を上げているかを把握できます。人材配置や追加出店の可否を判断する材料として活用できます。

 

活用方法① 店舗別に分析する

1店舗単位で労働分配率を算出すると、それぞれの店舗の収益構造が浮き彫りになります。

A店舗:人件費率は高いが、処方箋単価が高く利益が確保できている

B店舗:人件費率は低いが、売上自体が少なく利益が伸び悩んでいる

このように見比べることで、人件費の問題なのか、売上の問題なのかを判断でき、適切な改善策につなげられます。
 

活用方法② 年次推移を追う

1年単位だけでなく、3年・5年スパンで推移を見ると、経営の方向性が分かります。

年々労働分配率が上昇している場合 → 人件費が上がっている、または売上が減少している可能性

安定して50~55%前後に収まっている場合 → バランスが取れた経営状態

定期的にチェックすることで、早めに経営の歪みを発見できます。

 

活用方法③ 他の指標と組み合わせる

労働分配率は単独で見るのではなく、人件費率(人件費÷売上高)や営業利益率と合わせて分析するとより有効です。

例えば、

労働分配率が高いが営業利益率も高い → 人件費を厚く配分しても十分に利益が出せている健全な状態

労働分配率が高く、営業利益率が低い → 利益が人件費に偏りすぎている警戒シグナル

といったように、複数の指標を組み合わせることで、経営状況をより立体的に把握できます。
 

まとめ

労働分配率は「利益のうち人件費がどのくらいを占めるか」を表す重要な指標です。
薬局においては、人件費の水準だけでなく、付加価値(稼ぐ力)を高められているかどうかを測る物差しにもなります。

店舗別に算出することで現場ごとの課題が見える

年次推移を追うことで経営の方向性が分かる

他の指標と組み合わせることで総合的な分析が可能
当事務所では、薬局経営に特化した視点から、労働分配率をはじめとする各種経営指標の分析と改善提案を行っています。
「人件費が重いのではないか」「利益が伸びない原因が知りたい」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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