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2025/09/04 コラム

良さそうな薬局M&A案件が来た!どう判断すればよいのか

薬局経営をされている方の中には、「良さそうなM&A案件がある」と紹介を受けて相談に来られる方が非常に多くなっています。
店舗数を増やしたい、収益の柱を増やしたいという思いから興味を持たれる一方で、いざ話が来ても「本当に良い案件なのか?」「どこを確認すればよいのか?」と迷われるのが実情です。

ここでは、薬局専門の会計事務所として、M&A案件を判断する際に注意すべきポイントをご紹介します。
 

表面的な条件だけで判断しない

M&Aの案件情報には、「売上高」「店舗数」「立地条件」などが示されます。もちろん重要な情報ですが、それだけで良し悪しを決めるのは危険です。

例えば売上が大きくても、利益率が低ければ資金繰りに苦しむ薬局かもしれません。
また立地が良くても、処方元クリニックの医師が近く引退予定であれば、将来の処方箋枚数は大きく減少する可能性があります。

「数字の裏に潜むリスク」まで確認することが欠かせません。

 

チェックすべき主なポイント

 

1. 固定資産・リース残高の内容

  • 店舗や設備の固定資産がどの程度残っているか
  • 調剤機器や内装リースの残債務がどれくらいあるか
  • 今後更新が必要な高額設備(レセコン・自動分包機など)の有無

さらに、M&A案件では「修正PL(修正済み損益計算書)」が提示されることも多いですが、業績が良く見えるような修正だけが行われていないか注意が必要です。
例えば、通常発生するはずの修繕費等の経費を除外して利益が水増しされていないか、元の決算書と照合して確認しましょう。

 

2. 必要な借入金額と返済可能性

M&Aで薬局を取得する際、多くの場合は借入による資金調達が必要です。

  • 買収に必要な借入金額はいくらか
  • 返済期間を設定したときに、毎月の返済額を利益で十分に賄えるか
  • 将来の薬価改定や処方箋減少を想定しても返済余力は残るか

この視点を持たずに進めてしまうと、買収後に資金繰りが行き詰まるリスクがあります。

 

3. 処方箋の安定性

  • 処方元クリニックとの関係性
  • 医師の年齢や後継者の有無
  • 処方箋枚数の推移

薬局の収益は処方箋枚数に大きく依存します。クリニックの閉院や競合の進出など、外部要因で一気に経営が傾く可能性があるため、長期的な視点での安定性を必ず確認する必要があります。

 

4. 人材・労務環境

  • 薬剤師・事務スタッフの定着率
  • 給与水準と労務コスト
  • 就業規則や勤務実態

スタッフが退職してしまえば、利益の計算が成り立っても現場は動きません。「人材」も一緒に承継するという認識が必要です。

 

予算シミュレーションで判断を補強

案件を評価する際には、シナリオ別の予算シミュレーションが有効です。

  • 現状維持シナリオ
  • 処方箋減少シナリオ
  • 人件費増加シナリオ
  • 借入返済を織り込んだシナリオ

これにより、ベストケースではどれくらい利益が出るかワーストケースでも返済を含めて資金繰りが回るかを具体的に確認できます。

薬局特有の要素を加味したシミュレーションは、業界に精通した会計事務所だからこそ可能です。

 

専門家の意見を取り入れる

M&Aは一度契約すると後戻りが難しく、失敗すれば大きな損失につながります。
経営者一人で判断せず、**専門家の意見を聞く(財務DD=財務調査)**ことが不可欠です。

  • 修正PLが妥当かどうかの検証
  • 固定資産やリース残高の内容精査
  • 必要な借入金額と返済可能性の分析
  • 契約書の不利な条件チェック

こうした事前の確認が、安心して案件を進めるための鍵となります。

 

まとめ

「良さそうな薬局M&A案件がある」と聞いても、即決するのは危険です。

  • 固定資産やリース残高の内容を精査する
  • 修正PLの見せ方に惑わされない
  • 必要借入金額と返済可能性を必ず試算する
  • 専門家の意見を聞く(財務DD)ことで判断を補強する

 

これらを踏まえて案件が「本当に良いものか」を客観的に見極めてください。

当事務所では、薬局経営に特化した知見をもとに、M&A案件の初期相談からシミュレーション、契約前の検証まで一貫したサポートを行っております。

「M&A案件が来たけれど判断に迷っている」という薬局経営者様、ぜひ一度お問い合わせください。

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