法人(株式会社など)は、決算公告など一定の情報を外部に公表する義務があります。これを「公告」といい、会社法に基づいて定められています。
特に薬局経営においては、開業後に法人化するケースやM&A後に会社組織になるケースも多く、「公告の方法をどうすべきか?」といったご相談をよくいただきます。
そこで今回は、薬局を運営する法人が知っておくべき「公告の方法」についてわかりやすく解説します。
公告の方法にはどんな種類がある?
公告の方法は、会社設立時の定款で定める必要があります。定款に定めた方法で公告を行うことが法律上求められており、主に以下の3つの方法があります。
① 官報による公告(もっとも一般的)
- 概要:国が発行する「官報」に掲載する方法。
- 特徴:掲載費用は数万円程度で済み、実務的にも簡便。
- 選ばれる理由:コストが比較的安く、公告義務を確実に果たせるため、多くの法人が採用しています。
- 最も多く採用されている方法です。
② 日刊新聞紙による公告
- 概要:全国紙または地方紙などの日刊新聞に掲載。
- 特徴:掲載スペースにより費用が高額になりやすく、中小企業ではあまり選ばれません。
- 薬局においてはコストの観点からほとんど使われていないのが実情です。
③ 電子公告(自社のWebサイトへの掲載)
- 概要:自社のホームページ上に決算公告などを掲載する方法。
- 特徴:実費は安いが、法的要件を満たすホームページの整備や長期的な掲載義務(原則5年間)が求められます。
- 注意点:公告内容が継続して閲覧可能であることが要件とされており、対応できる体制がある法人向けです。
実際に薬局法人が選んでいる公告方法は?
当事務所が支援している薬局法人では、「官報による公告」か「電子公告」を選択しています。
官報による公告としている理由としては以下の通りです:
- 実務が簡単でコストが安くて済む(掲載料は3万円程度)
- 公告義務を確実に履行できるためトラブルが少ない
一方で、電子公告を選ぶ場合は、会計ソフトやホームページ運用に慣れている企業であることが前提となります。
昨今ですと会計ソフトに連携した電子公告システムを利用する方もいます。
実際に公告している会社はどれくらい?意外と多い“未公告”の実態
法律上、株式会社は毎期の決算において「公告」を行う義務がありますが、実際には公告をきちんと行っている中小企業はごく一部にとどまります。
民間の調査では、決算公告を実際に行っている法人は全体の1割未満とも言われており、特に小規模事業者では公告を失念しているケースが非常に多いのが実情です。
薬局法人においても、
- 「設立時に公告の方法を決めただけで、その後放置している」
- 「電子公告を選んだけれど、ホームページに掲載できていない」
といったご相談を多くいただきます。
公告を怠った場合のリスク
- 法令違反による代表者の責任リスク
- M&A・金融機関の審査等で決算内容の不透明さが指摘される
- 将来的な行政調査や監査対応で不利益を被る可能性
公告義務を軽視することで、本来防げたリスクが表面化することもありますので注意は必要です。
公告方法の選定・変更についての注意点
- 公告方法を変更したい場合には、株主総会の特別決議が必要です。
- 電子公告を採用しているにも関わらず、要件を満たしていない場合は公告義務を果たしていないと判断される可能性があります。
- 会社設立時に公告方法を定款に明記しておく必要があります。
公告についても薬局に強い税理士にご相談ください
公告方法の選定は、設立時にはつい見落とされがちですが、長期的な運用コストや実務への影響を考慮しておくことが重要です。
当事務所では、薬局経営に関する法人設立・公告の方法についても丁寧にアドバイスしております。実務に沿った形で、最適な公告方法の選定をご支援いたします。