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2025/07/27 相談事例

薬局の事業承継──剰余金が多い薬局ほど“次の一手”が重要です

「数年後には引退を考えている」とご相談いただいたのは、有限会社で長年地元で薬局を営まれてきたお客様。先代の税理士の先生がご高齢で引退され、当法人が新たにご相談をお受けしました。

帳簿を拝見すると、黒字経営が続いており剰余金も潤沢。今すぐに経営が厳しいという状況ではないからこそ、「誰に引き継ぐのか」という将来の備えが大切になります。

ここでは、薬局における事業承継の進め方について、ポイントをいくつかの視点からご紹介します。


薬局経営と「事業承継」のタイミング

薬局は他の業種と比べて、承継のタイミングを見極めるのが難しい業種です。店舗運営が安定している場合、「まだやれる」「今すぐじゃなくていい」と考えがちです。しかし、体調の変化や人材不足、薬剤師確保の難しさなど、外的要因で急に承継が必要になることもあります。


誰に承継するのか?──親族内・従業員・第三者

  • 親族内承継
     お子様や親戚に引き継ぐ方法です。薬剤師資格の有無や薬局経営への関心があるかがポイントとなります。
  • 従業員への承継(MBO)
     長年勤務している薬剤師や店舗責任者に引き継ぐ形です。信頼関係がある反面、資金調達の支援や経営面の教育も必要です。
  • 第三者への売却(M&A)
     ドラッグストアチェーンや他の薬局法人への売却です。高齢化に伴いこの方法を選ぶ薬局も増えており、事前準備により高値での譲渡が可能となることもあります。

事業承継に向けた“見える化”と準備

 

承継の準備として、まずは財務状況の整理が不可欠です。具体的には以下のようなポイントを洗い出します。

  • 法人名義の資産と個人名義の資産の区分
  • 店舗の契約状況や設備の償却状況
  • 直近3期の決算状況
  • 役員報酬・役員貸付金の有無
  • 在庫の適正性と管理方法

これらを整理し、「見える化」することで、承継希望者や譲渡先にとっても安心材料となります。


税務面の落とし穴に注意

事業承継では、税金の問題も無視できません。特に以下の点に注意が必要です。

  • 株式の評価額が高い場合の贈与税・相続税リスク
  • 役員貸付金の処理と精算
  • 退職金の支給とそのタイミング
  • 設備の譲渡や債務の引き継ぎに伴う税務処理

法人に資産が残っているからこそ、「うまく引き継がないと税負担が重くなる」ことも。事前にシミュレーションし、税理士や他士業との連携が重要です。


最後に──承継は「先送り」せず、早めの相談を

「今すぐ困っていない」からこそ、今のうちに準備するのが理想の事業承継です。特に薬局業界では人材や設備の継続性が重要で、譲り渡す側・引き継ぐ側双方が納得するためにも時間がかかります。

当法人では、薬局専門の知見を活かし、承継までのステップを一緒に伴走いたします。事業承継を少しでも考え始めたタイミングで、ぜひ一度ご相談ください。

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