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2025/07/04 コラム

薬局経営における「固定資産の処理」と資金繰りの関係

薬局の経営をスタートさせるにあたって、必ず出てくるテーマのひとつが「固定資産の処理」です。
とくに、はじめて開業される薬局オーナーの方とお話していると、「減価償却費という言葉は聞いたことがあるけれど、実際にはどう処理されるのかよく分からない」という声をいただくことがあります。

今回は、固定資産の会計処理のうち、特に「資金繰り」との関係に焦点を当てて解説します。
詳細な会計処理の手順までは触れませんが、経営者として押さえておくべきポイントに絞ってお伝えします。

固定資産とは何か?

薬局を開業・運営するには、多くの設備投資が必要になります。
たとえば、店舗の内装工事、外看板、待合室や調剤室の什器備品、そしてレセプトコンピュータ(レセコン)などです。これらの多くは「固定資産」として扱われます。

支払方法については、一括払いか分割払いかの違いは感覚的にも理解しやすいものですが、これらの支出が会計上どのように処理されるのか――特に「減価償却」による経費化は、簿記の知識がない方にとっては少し分かりにくいかもしれません。

減価償却とは?

減価償却とは、固定資産にかかった費用を、その資産が使われる期間にわたって少しずつ経費として計上していく会計処理のことです。

税務上は「法定耐用年数」と呼ばれる基準があり、たとえば賃貸物件における内装工事であれば、おおむね10年から15年とされます。つまり、内装に500万円かけたとしても、それをその年にすべて経費にするのではなく、15年で割ると1年あたり約33万円程度しか経費として計上されない、ということになります。

資金繰りとのズレに注意

ここで重要なのは、「実際の支払い」と「経費としての処理」のタイミングがズレているという点です。

たとえば、開業時に内装工事に500万円を一括で支払った場合、その時点で手元資金は一気に減ります。ところが、会計上は先述のように毎年少しずつしか経費にならないため、その年の費用としては33万円しか認められません。

これにより、手元資金は大きく減っているのに、帳簿上は利益が出ているように見えるという現象が起こります。たとえば、その年に別の事業利益が200万円出ていた場合、経費として落とせるのは内装分の33万円のみなので、課税対象となる所得は約167万円。税率を25%とすると、約42万円の法人税が発生します。

「黒字なのに資金がない」の正体

このように、すでに多額の現金を支出しているにもかかわらず、帳簿上は利益が出ているとみなされ、さらに納税が発生する――というのが、薬局経営者にとっての「資金繰りの落とし穴」になります。

これが、いわゆる「黒字倒産」の原因のひとつでもあります。

まとめ

薬局経営においては、開業時の設備投資など大きな支出が発生しますが、これらは固定資産として扱われ、減価償却を通じて少しずつ経費化されます。
この「支出と経費のタイミングのズレ」は、資金繰りや納税額に大きく影響します。

経営者としては、この仕組みを理解したうえで、納税額やキャッシュフローにどう影響するかを見越して資金計画を立てていくことが大切です。

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